こんにちは、Ananasです。
東京から移住してきた私が、こちらで初めて食べたものはたくさんあります。
不思議と、「見たこともない」ものよりも、「見たことあるけど食べるなんて初めて」なものの方により興味を引かれている気がします。
今まで遠い存在だと思っていたけど、付き合ってみたら案外良い奴だったんじゃん、というような意外性が面白いのかもしれません。
今回はそんな風に出会った食材のひとつ、ナーベラーのお話です。
ナーベラーって?
そもそもナーベラーとは何かというと。
はい、ヘチマです。
私にとってヘチマとは、小学校の時に理科の教材として学校で育てていた植物で、母が使っていた化粧水がヘチマ水で、乾燥するとタワシにもなるらしい・・・など、実用的な印象しかありませんでしたし、正直、石垣島の青果市場で再会するまでその存在を思い出すことすらないような、私の暮らしには縁遠い植物でした。
それがこちらでは家庭でもよく食べる夏野菜の代表格だと聞き、「へえ、食べられるんだ」と。
同じ日本なのに全然違う食文化にぐっと心をつかまれ、食べてみればトロッととろける食感と
優しい甘さに頬が落ちました。
どうやって食べる?
石垣島で定番の調理法は「ナーベラーンブシー」、味噌煮です。
(“ンブシー”とは、“蒸す”が語源となっている、調理法を表す沖縄の言葉です。)
ナーベラーンブシーは、島豆腐とポークが使われるのが一般的で、居酒屋さんや定食屋さんのメニューでも良く見かけます。ナーベラーの特徴でもある、熱を入れるとトロッととろける食感がしっかり味の味噌をまとって絶妙なバランスなのです。
その他、我が家ではトマトやオクラと一緒に夏野菜卵炒め(味付けはオイスターソースがおすすめ)にしたり、子供用にグラタンに入れてみたりと、ナスのような感覚で和洋中のジャンルを越えて利用しています。
どうして「ナーベラー」?
そもそもヘチマには糸瓜(いとうり)という別名があります。
私は、こちらに来て初めてヘチマタワシというものを作ってみたのですが、これを見るとどうして糸瓜なのかはよくわかりました。
タワシという硬そうなイメージとは裏腹に、乾燥した繊維は柔らかく、まるで木綿の糸が絡み合っているみたいです。
ですので、傷をつけたくないシンクやお鍋を洗う時に使うのですが、なんとこれこそがナーベラーの名前の由来だったらしいのです。
沖縄は古くから中国との交流がたくさんあったので、今も暮らしの中に中国文化の名残を見つけることが多くありますが、ナーベラーもその一つで語源は鍋羅(なべら)。羅は、網目状の繊維を意味しています。
編み織られたような形状で鍋を洗うのに使われていたことにちなんで使われていた、中国語の別名「洗鍋羅瓜」からの派生だそうです。
郷に入れば郷に従え、とはよく言いますが、いつの間にか私も夏になると「あー、ナーベラー食べたい」と、普通に思うようになりました。
今日も通りすがりの畑では、黄色い花に埋もれるようにたわわな実がぶら下がっていました。それを見ながら私は、冷蔵庫に島豆腐は残っていたっけ?と、心の中で確認するのです。