NAOです。島では旧暦に基づいた行事、イベントが色々あります。「とぅばらーま大会」は毎年旧暦8月13日の夜に開催される民謡大会です。満月の少し手前、美しい十三夜の月を背景に八重山の叙情歌、無形文化遺産「とぅばらーま」に酔いしれるひと時。
▲とぅばらーま発祥の地といわれる仲道の三番アコウ木。本来はここで前夜祭が開催されますが今年は中止。
「とぅばらーま」とは
「とぅばらーま」の語源は諸説ありますが、女性からみた「愛しい殿方」的な意味合いがあります。男性から女性に対する言い方は「かぬしゃーま」。
「野とぅばらーま」といって野良仕事の帰りにアカペラで歌われていた時代もあります。名人とされる人が遠くで歌うと、別の方角から「ツィンダーサーヨー」と囃子が返ってきて…。
こんな歌詞があります。
星ばかめー すぃかまぬ 戻り道
なぐさめ ひーすや とぅばらま 歌たんが
<歌意:星を見ながら野良仕事からの帰り道 疲れを慰めてくれるのはとぅばらーま歌>
車のない時代、静寂の中に響く歌声…今はもう見ることができない光景です。とぅばらーまは次第に三線を用いて歌われるようになります。歌詞の内容も男女の恋、親や故郷を思うもの、人々の生活の喜び悲しみなど様々。出場者は自分の好きな歌詞を選び、まれに自作の詞で唄う方も。
とぅばらーま歌集。方言の勉強になります。
とぅばらーま大会にむけて
大会約1週間前に予選がありますが、これがまた大変な緊張感。「シィマムニ(島の方言)」の発音、思い入れ、息継ぎなど、様々な視点から審査が行われます。息継ぎは2回が理想ですが、私は全然息が続かないです💦予選を勝ち抜いた人が本選出場の切符を手に入れます。通常23名ですが、今年は縮小で16名。最優秀賞に選ばれると、その後は「とぅばらーまチャンピオン」として様々なイベントに出演したり、島での知名度も上がります。
令和2年度とぅばらーま大会
昭和22年から続いている本大会、コロナ禍でどうなるかと思いましたが、令和2年9月29日(火)、無事、新栄公園で開催されました。中学生から80代の方が歌唱を披露しました。歌唱だけでなく作詞部門の表彰もあります。
▲今年のパンフ
会場は人数制限により「入場整理券」を持つ人が一定のエリアへ入れました。まだ少し明るさが残る日没の頃に始まり、夜空を見上げるといつしか月が輝き始めました。「これは」という歌声には会場から拍手や指笛が惜しみなくとびます。
十三夜の月の下、唄者の思いが伝わって涙がでます。
審査結果発表。マスクをする姿も今年ならではです。皆さん素晴らしかったですが、残念ながら今回は最優秀賞該当なし。優秀賞2名、奨励賞1名でした。約15年前にも該当なしの年があったと記憶しています。また来年が楽しみです。
令和2年度とぅばらーま大会、この場に来ることができただけで幸せな心持ちになれました。いつか自分も方言で作詞できたらいいなぁなんて夢見ながら、大会が終わったあとは久しぶりに再会した仲間達とちょい飲みに繰り出し、とぅばらーま談義♪ 月と歌声に慰められた夜でした。